貸付事業用宅地等について

税に関するコラム

 小規模宅地等の特例は、相続税の計算上、一定の面積までの部分について土地の相続税評価額を減額できる特例のことです。
 土地の用途としては①事業用(不動産賃貸業以外)、②居住用、③貸付(不動産賃貸)用の3つのいずれかに該当することが必要です。
 不動産オーナーの場合、貸付用の土地は必ず小規模宅地等の特例との関連性が出てきますので、貸付事業用宅地等の留意点などについて理解を深めておきましょう。

1.概要

 小規模宅地等の特例の適用対象となるのは、「個人」が「相続または遺贈」により取得した土地で、「建物または構築物の敷地」であることが必要です。よって、例えばアスファルトや砂利のない貸駐車場については、構築物の敷地であるとは言えないことから、特例の適用対象となる要件を満たさないことになります。

 土地の用途に応じた減額割合と限度面積は下表のとおりです。
 小規模宅地等の特例の適用に当たって、200㎡部分について貸付事業用宅地等の適用を受けると、限度面積いっぱいの適用を受けていることから、他の区分で合わせて特例を適用することはできません。
 逆についても同様で、例えば330㎡部分について特定居住用宅地等(自宅の敷地)の適用を受けると、限度面積いっぱいの適用を受けていることから貸付事業用宅地等について合わせて特例を適用することはできません。
 以上から、複数区分の土地がある場合、どの土地で小規模宅地等の特例を適用するかは重要な検討事項となります。
※特定事業用宅地等または特定同族会社事業用宅地等と特定居住用宅地等は、それぞれの限度面積まで特例を併用して適用することができます。
(400㎡+330㎡=730㎡まで適用可)

用途 区分 減額割合 限度面積
事業用 特定事業用宅地等 80% 400㎡
特定同族会社事業用宅地等 80% 400㎡
居住用 特定居住用宅地等 80% 330㎡
貸付用 貸付事業用宅地等 50% 200㎡

 貸付事業用宅地等については、相続開始の直前において被相続人や被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていたことが必要です。
 そのうえで、その土地を取得した相続人が、相続税の申告期限までその土地を保有し、貸付事業を継続することが要件となります。

<ケース1:被相続人の貸付事業の用に供されていた場合>

被相続人の貸付事業の用に供されていた場合の説明画像
  • 土地は被相続人(親)の貸付事業用宅地等に該当し、土地・建物を取得した相続人が相続税の申告期限まで貸付事業を継続すれば、小規模宅地等の特例の適用が可能です。
  • 土地の評価は、貸家建付地評価となります。

<ケース2:同一生計親族の貸付事業の用に供されていた場合>

同一生計親族の貸付事業の用に供されていた場合の説明画像
  • 土地は同一生計親族(子)の貸付事業用宅地等に該当し、当該子が土地を取得して相続税の申告期限まで貸付事業を継続すれば、小規模宅地等の特例の適用が可能です。
  • 土地の評価は、自用地評価となります。

<最終的な納税額を意識する>

 例えば、相続財産に自宅と賃貸マンションがあり、自宅は配偶者、賃貸マンションは子が相続するとします。
 自宅の敷地で特定居住用宅地等として特例の適用を受けるか、賃貸マンションの敷地で貸付事業用宅地等として特例の適用を受けるか、どちらか一方でしか特例の適用を受けられないとすると、特例適用の優先順位をどのように考えれば良いのでしょうか。

 減額される金額が大きいのは自宅敷地で適用を受けた場合ですが、配偶者には配偶者の税額軽減の適用があり、法定相続分または1億6,000万円のいずれか大きい金額まで財産を取得しても相続税の納税は生じないため、自宅敷地で特例を適用してもしなくても、配偶者自身の納税額はゼロのまま変わらない可能性があります。

 このような場合、相続税の納税が生じる子が取得する賃貸マンションの敷地で小規模宅地等の特例を適用した方が、減額される金額は自宅に比べて少なくなったとしても、最終的な納税額が少なくなることも十分考えられます。
 よって、自宅敷地で適用を受けた場合と賃貸マンション敷地で適用を受けた場合の最終的な納税額を比較して、より少ない方を選択すれば良いと思います。

2.3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等

 貸付事業用宅地等には3年縛りがあり、相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等については、小規模宅地等の特例を受けることができません。

 相続税対策を目的に賃貸不動産を取得・建築するのは、現金から不動産に資産を組み替えることで、個人の財産額を圧縮することが期待できるためです。

<現金を建物に組み替えた場合の評価差額のイメージ>
現金を建物に組み替えた場合の評価差額のイメージ

 そのうえで、さらに小規模宅地等の特例を適用し、200㎡部分までの土地について50%の評価減の適用を受けることは、駆け込み的に取得した賃貸不動産にまで認めるべきではないという考え方なのだと思います。

<事業的規模で不動産賃貸を行っていた場合>

 相続開始前3年以内に新たに貸付事業の用に供された宅地等であっても、被相続人等が相続開始の日まで3年を超えて引き続き事業的規模(いわゆる5棟10室基準)で不動産賃貸を行っていた場合は、当該宅地等に対する3年縛りの適用はありません。
 もともと事業的規模で不動産賃貸を行っていた方は、駆け込み的に不動産賃貸を始めた方とは状況が異なり、相続開始前3年以内に新たに賃貸不動産を取得したとしても、それは不動産賃貸業の一環であって、単なる駆け込み的な取得とは区別するべきだという考え方なのだと思います。

<貸付用不動産の評価見直し>

 駆け込み的な不動産の取得を、相続開始前のどの程度の期間と見るかについては様々な考え方があるかもしれませんが、今後は相続開始前5年以内に取得した一定の貸付用不動産については、取得価額の80%相当額で評価されることになり、これまでのような大きな評価差額の効果を得られるまでに5年という時間を要することになります。
 新しい評価方法は、令和9年1月1日以降の相続・贈与から適用されることになり、ルールの詳細を規定した通達の公表が待たれるところです。
 なお、あくまで駆け込み的に取得した賃貸不動産の評価方法を規制する趣旨なので、取得・建築から既に5年を経過している賃貸不動産については、新しい評価方法の見直しの影響はありません。(不動産小口化商品は、取得時期にかかわらず通常の取引価額に相当する金額によって評価)

3.空室期間がある場合

 貸家と貸家建付地について相続税評価額が減額されるのは、賃貸不動産の借主が存在することにより、土地や建物の自由な使用収益が制限されることを反映したものですが、例えば賃貸マンションに空室がある場合、それが一時的な空室であると認められなければ、その部分については評価減の適用を受けることができません。

 一時的な空室であると認められる基準について、国税庁の質疑応答事例では以下のように示されています。

  1. 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること。
  2. 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと。
  3. 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること。
  4. 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと。

 小規模宅地等の特例における貸付事業用宅地等については、賃貸マンションの空室をどのように考えるのでしょうか。
 小規模宅地等の特例の趣旨は、亡くなった方や、亡くなった方と生計を一にしていた親族の「事業」の用や「居住」の用に供されていた土地を保護することなので、貸家と貸家建付地の評価減の考え方とは異なります。
 よって、たとえ空室期間が長かったとしても、新たな賃借人の募集を継続しているなど貸付事業の用に供している状況だと判断できれば、貸家と貸家建付地の評価減は認められなかったとしても、小規模宅地等の特例は認められるべきものと考えられます。

4.おわりに

 小規模宅地等の特例の対象となる土地が複数ある場合に、どの土地で特例を適用するかは、その適用対象である土地を取得した相続人全員の同意が必要になります。
 自身が取得する土地で特例を適用した方が、その方の相続税が軽減されることになるため、どの土地を相続するかを決めるだけではなく、どの土地で特例を適用するかについても協議する必要があります。
 相続人間で争いになってしまうと、小規模宅地等の特例を受けられなくなる可能性も出てきます。円満な資産承継の実現が、税金対策としても有効だということです。

【情報提供元:税理士法人 FP総合研究所】
https://www.fp-soken.or.jp/



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